きつねとCDウォークマン-4

「そんなにこわいんなら、もういかなければいいじゃないか。だいたいおまえ、なんでそんなもんに近づこうとしたんだ?」
「あそこには、ボクのたいせつなお花があるんだ。あしたは妹のたんじょうびだから、今日はたくさんつんでおこうと思って。だけととっても不思議なんだ。ボクは今まで、お花のことなんてすっかりわすれていたのに、とつぜん思い出したんだもの。きっと、あなたに会えたおかげだ」
「ぼ、ぼくに?」
「そうですとも!」
きつねはとつぜん、言葉づかいがていねいになったかと思うと、目をかがやかせてこういった。
「むかしから、不思議なことはみんな神様の教えなんだって、うちの父さんがいってました。ぼくにお花ばたけを思い出させてくれたのは、きっと神様……。そう、あなたです! ああ、あなたは神様だったんですね!」
「はぁ? なにいってるんだよ、急に」
「だって、ボクがお花をつもうと思ったのは、神様からのお告げがあったからなんです。きっと、そうなんですよ。だってボクは、ついさっきまで家の仕事でいそがしく、なにしろ、お庭のそうじにさらあらい、おふとんの葉っぱをお日さまにあててかわかして、それがおわると食べものをさがして、夕方までにお料理こしらえて、夜は妹とあそんであげて、毎日そんなくらしをしていると、いったい今日が、何月何日なのか、わかんなくなっちゃうでしょう? そんなとき、ふっときこえたんですよ。空から、お花をつみにいきなさいって、ささやくように声がしたんです。それはきっと、神様がボクにおしえてくれたんですよ。妹のたんじょうびをわすれるなってことです。そうでしょ?」



eguchi
  • eguchi
  • 子どものころから30年間趣味で、動物が出てくる童話を書いている。2020年に動画をきっかけにブログを始める。
    猫大好き!子どもとネコカフェやカラオケに行くのが楽しみ。