きつねとCDウォークマン-10

「CDウォークマンだ」
「ねぇ、それってうまいのか? どんな味するんだ? ボクもほしいなぁ。そうだ! せっかくだから、妹のたんじょうびのごちそうにしますよ。どんなかたちしてるんですか? どこに生えてます?ボクたくさんとってきて、冷蔵庫にしまっておきますよ。お料理のしかたもおしえてくださいね!」
「あのねぇ、それは食べものじゃなくて……」
そういって、ぼくはこうかいした。
これじゃあ、CDウォークマンってものを説明しなきゃならなくなる。
……あぁ、うそでも食べものだって言っとけばよかった。

予想通り、それは音楽をきくものだっていう説明をさせられたあげく、
「ああ、それならボクももってますよ。月のきれいな晩に、父さんとふたりで野原に出かけていったときに見つけた小石で、これが夜、そっと耳にあててみると、いい音がするんです。死んだ母さんといっしょに山をかけまわったときの風の音がきこえてきます。神様、その石のことまで知っていたんですね。さすがは神様。ボクのことはなんでもお見通しだ」
と、ますますほめられてしまったのだった。
「あのう……そういうんじゃなくて」
「でもまさか、あれがほしいんですか?いくら神様でも、あの石はあげられませんよ。ボクのたからものですからね」
「いらないよ、そんなもん!」
あぁ……。
このおしゃべりきつねにつきあうのって、けっこうつかれるな。



eguchi
  • eguchi
  • 子どものころから30年間趣味で、動物が出てくる童話を書いている。2020年に動画をきっかけにブログを始める。
    猫大好き!子どもとネコカフェやカラオケに行くのが楽しみ。