ふぁーう村の新聞がかり
ふぁーう村の新聞がかり
ふぁーう村の小学校の新聞がかりの4人は、初めてのインタビューが無事に終わって、学校にもどる途中でした。
みんな、新しい新聞を作るためにはりきっていました。
けれど、リーちゃんだけは、ガッカリしながら歩いていました。
「そんなにおちこんだってしょうがないじゃないか」
友達のカルターがなぐさめました。
リーちゃんが落ちこんでしまったのには、こんな理由がありました。
1週間前、リーちゃんとフェンサー、カルターとトゥロンの4人は、クラスの新聞がかりに決まりました。
村を紹介する記事を書くため、4人は村長さんに会いに行くことにしました。
村のことをくわしく教えてもらって、教室のカベにはる新聞をつくるのです。
「まず、村の名前の由来を聞かなくちゃ! 村には、ちゃんと名前の理由があるはずよ」
リーちゃんは、名前の由来を聞くのをドキドキしながら待っていました。
ほかの村の名前の由来を聞いたときに、とってもすてきだったからです。
となりの村は、カッコいいジェット機と同じ名前でした。
そのとなりの村も、
【困った人を助けたときに、友情のあかしにもらった花の名前】
というすてきな由来がありました。
だからリーちゃんは、ふぁーう村の名前の由来を早く知りたいと思って、新聞がかりに決めたのです。
「ふぁーうって名前は、どんな由来があるのかしら。楽しみ!」
新聞がかりの4人は、ふあーう村の村長のアザー・オーリーさんをたずねました。
もちろん、1番ドキドキしていたのは、リーちゃんでした。
いよいよ、すてきな由来が聞けると思ったからです。
ところがアザー・オーリー村長は、村の名前の由来をたずねられると、
「あー、それねぇ。前の村長が王様の前で村の名前をきかれたときに『ふぁーう』って大あくびしたのさ。それ以来、この村の名前はふぁーう村ってわけさ」
と、笑いながら答えたのです。
リー は心の中で、
「なにそれ!」とさけんでいました。
リーちゃんは、今聞いてきた村の名前の由来を、教室にはる新聞に書くなんて、どうしてもイヤでした。
リーちゃんは思いきって、新聞がかりのメンバーに言いました。
「ねぇ、べつの由来じゃダメかな?」
「べつの由来って?」
「もっとすてきな由来だったことにするの」
「え〜? だったことにって‥‥‥。ちがう由来を考えるってこと?」
カルターはおどろいてリーちゃんを見ました。
「せっかく村長さんに聞いてきたのに」
「そうだよ。ウソを新聞に書くなんておかしいぞ」
フェンサーも反対しました。
「だって、あくびなんて書いたら笑われちゃうし‥‥‥」
「まぁ、分からなくもないけどさ」
トゥロンがいいました。
「じゃあ、リーちゃんはどんな由来だったらいいのさ」
「あたし? あたしなら……花の名前がいいかな。たとえば、困っている人がいて、その人をうちの村で助けるの。そしたらお礼にお花をもらうのよ。その花の名前がふぁーうっていうの」
「なんだよ、それ」
フェンサーがバカにしました。
「じゃあ、フェンサーだったら?」
「オレか? オレだったら世界一のごうかな船の名前だな。ふぁーう号って、この村にある材料でつくった船の名前、なんてどうだ?」
「フェンサーは船が好きだからね」
カルターが言いました。
「カルターだったら?」
「ぼくは、博物館の名前がいいですね。歴史を感じる博物館の名前が、そのまま村の名前になったというのは、新聞の記事としてはいいでしょう」
「トゥロンは?」
「ぼくはラーメンの名前がいいや。地元の野菜をつかった、おいしい『ふぁーうラーメン』が、村の名前の由来になったとかさ」
「うーん、いまいち味がイメージできないかも?」
「でも、どれもあくびよりましよね」
そこへ、となりの村の女の子がやってきました。
「正直に書いたほうがいいよ。うちの村なんて、ホントは自転車の部品つくってるから自転車の名前が由来だったのに、村長さんが見栄はって、ジェット機なんて言うからさ、テレビ局から電話がきちゃって、『ジェット機の名前が由来となった村を、取材させてくれ!』なんて言われて、ことわるの大変だったんだって!」
「え?それじゃ、ジェット機が由来って話、うそだったの?」
それを聞いたリーちゃんは、
(やっぱり村の名前はあくびが由来だって、書かなきゃいけないんだ)
と思って、ガッカリしました。
そこへ、先生が手紙を持ってきました。
「村長さんからよ。すごいわ!フェンサーくん。あなたには船のチケットが届いているわ」
「村長さんから?」
「そうよ。それとね、カルターくんには、博物館のチケット。トゥロンくんには、ラーメン屋さんの券が入っているわ。リーちゃんのもあるわよ」
「どうして村長さんが、ボクたちにチケットをくれるんですか?」
「村長さんはね、みんなの話をよく聞いてくれる、優しい人なの。みんなが好きなものを覚えていてくれたみたいね」
先生は、名前の由来を聞いてガッカリしているリーちゃんに言いました。
「名前の由来よりも、この村にはいいところがたくさんあると思わない?」
リーちゃんは、ハッとしました。
「いいところ‥‥そうか!」
新聞には、やさしい村長さんの記事をのせることにしたのです。
やがて、新聞がかりが作ったかべ新聞は、こんなふうにしあがりました。
【この村は、前の村長さんが
王様の前であくびをしたから、ふぁーう村になりました。
のんびりしているけれど、みんなの話を
よく聞いてくれる、優しい村長さんでした。
おかげで、ふぁーう村には、いい人が
たくさんいます。
あくびが出るほど平和なふぁーう村に、
みなさんも、あそびにきてくださいね!】
おしまい